【グロ小説、閲覧注意】『無自覚カニバリズム』完結!!!
Game Introduction
[続き] ……キセルの家にあった箱に、キセルの奥さんの死体をぐちゃぐちゃに詰め、上からぎゅうぎゅうと蓋をした。 この街は朝昼問わず、夜と同じようなもんだ。 誰も見ていないし、誰も何も見ようとしない。この街じゃ。 いつかの非常食になるかと思い、ボクはその箱を持ち帰った。 キセルの頭は……その時どうしたっけな、忘れた。 ただ、もうこの世にないことは確実。 覚えていることといえば、キセルが目を瞑っていた遺体の前で、柔らかく左手でピースして、 「…幸せだったんだろうね、良かったよ」 ……そう言ってたことぐらい。 - - - - - - - 「……あ"ー、思い出したらなんかむしゃくしゃしてきた…捨てよ」 ぎゅうぎゅうに詰めすぎたせいか、蓋から血が溢れている選別済みの箱を、ポイっと生ゴミ用のゴミ袋に突っ込む。 「また増えちゃったよゴミ……ちゃんと消す方法考えなくちゃ………」 そう言いながら、ボクは右手で、キセルの手を握る。 ___誰か、ボクを「人間」として愛してくれることを信じて。
How To Play
『嘘でもいいの、愛してくれれば』 BGM:チーズ レオンでいう「あなたに大好きと言えたら」的な小説です 使い方→メモクレ で読んでね - - - - - - - 「……やっべ、これいい加減片付けんと…腐るわ…」 軋んだ音を立てて開いた箱の中から漂う異臭。 その中には、雑に、そして速く斬り落とされた断面の……人間の腕や足があった。 斬り落としたときに、頭は…流石に視線が気持ち悪いので、目玉だけくり抜いて知り合いにあげ、それ以外は現場に捨ててきた。 胴体と首を別々で斬り落としてきたので、胴体は別の部屋に置いてある。場所とるし、腹以外の場所は食べないし腐りやすい。正直言ってだるい。 腕や足を片付ける間もないが、これと同時に元の胴体も思い出して、これだけでも胃がもたれそうな予感がする。 「………あ」 自分でも少し鼻をつまみながら箱の中身の選別をしていたところ、他の箱よりえらく小さい箱に、『誰か』の左手、そして薬指に指輪がはめられていたものを見つけた。 その反動で、ふっと笑いが溢れる。 この指輪と手は、まさしくボクの本性の現れだ。 ……ボクが人でいう「カニバリズム」、鬼でいう「常識」こと『それ』に目覚めた話。 「……懐かしいなあ、いつだっけ」 異臭に塗れた青色のパーカーの上着を脱ぎ、ネオンイエローのフードに、雷型のドローストリングのついた、自分でも少し可愛らしいと思っている仕事着に着替える。 ガラリと窓から外に出て、ポケットに入っていたタバコにライターで火をつけたら、昔と同じように煙を吹いてみせる。 「そーだなぁ、今でもアンタが生きてたらタバコを渡してやりたいんだが……残念だな」 上に上にのぼる煙を見つめながら、電灯もろくにつかずに、薄暗くチカチカと点灯するだけの街の、星空を見上げる。 アンタと見上げた星は満点だったのにな、今はまるで0点の星空みたいだ。 - - - 「………見て見てキセルさん、ボクこんなとこまで登ったんだよー!」 ……何十年前のことだったか。 ボクは遥か昔、「旅人」という体で各地を転々としていた。 その時にたまたま出会った相棒と言って等しい人物が「キセル」だ。 「よしな、危ないよ……特にあんたまだ子供なんだしよ、そんな無理すんなって」 「キセルがおっさんなだけー!ボクまだ全然いけるし〜」 「このメスガキが」 「てへへ〜」 キセルはボクと違って普通の人間だったので、ボクのことを見た目からして子供だと思っていたらしい。 その時のボクの見た目いくつぐらいだっただろう。今の知り合いを見る限り13歳ごろか。 そのときにはボク、もう100年はろくに生きてるのに。 「あははっ、まあボクすごいでしょ〜」 ビルの3階あたりの建物から、左手でピースを作ってウィンクする。 キセルと旅人として世界をいろいろと周ったある日、キセルは30歳の誕生日を迎えた。 ボクはその当時、キセルが大好きだった。 わかんない。 子供としての、お友達感覚のような純粋の「大好き」なのか、大人としての立派な恋愛感情の「大好き」なのか。 はたまた、相棒としての「大好き」なのか。 キセルが各地で友達を作るたびに話していると嫉妬した。 それがキセルのコミュ力に対する嫉妬なのか、謎の独占欲によるものだったのかはわからない。 キセルがちょっとした昔の惚気話を聞くだけでも頬を膨らませた。 それが、ボクの恋人ができないことによる嫉妬だったのか、キセルに好かれた子に対する嫉妬なのかはわからない。 もう確かめようがない。 ___ある日、キセルとボクはある土地での定住を決めた。 世界………「世界軸」、「世界線」を転々としていたボクらは、今じゃレオンやほのが住むこの世界で住むことになった。 だが、環境的にはあまりよろしくない。 場所としての治安も悪ければ、人としての治安も悪い。 でもそこまではよかったのだ。 ボクらは「手慣れていた」から。 そんな人たちの始末に、対応に。 だから、ボクらはいつまでもそうやって暮らしていた。 そうやって暮らしていけると思っていた、のに。 __ある日、ボクはキセルの「左手」の「薬指」に付けられた指輪を見つけた。 探していたわけでもなければ、予想していたものでもなかった。 食事中にたまたま見つけたもんだったんで。 ボクは何も考えず、ただただ「何それ?」と聞いた。 「……ああこれ?婚約指輪」 思わず食べていた食事を戻しそうになった。 食事中に聞くもんじゃなかった。 何も言えなかった。 ……なんだこの気持ち。 鬱陶しいような、祝っていいのか、微妙なアレ。 そりゃ、ボクが一緒にいて幸せな人には幸せになってほしいし、キセルが幸せならそれでいいと思う。 ___だが、流石にこの話はボクにメリットがなさすぎる。 「いや急すぎない…!?ボク何も聞いてなかったんだけど……」 「ごめん、マキシに言うタイミングが見当たらなくってさ」 そう喋るキセルの顔は、頬は少し赤く、ニコニコとした笑顔だった。 ………通常、ボクでもそう見ないような笑顔。 …ああ。 …………また大事なもの取り逃してるよ、自分。 少し残念そうな涙目を隠し、少しニヤついたような顔で、声色を上げて言った。 「…で?お相手、どんな人なの?」 「え〜?ほんといろいろいい人だよ、マキシとは大違い」 キセルは笑いながら言ったが、多分そのセリフがボク人生で1番響いた。 キセルは昔から鈍感だった。いつも変わらなかった。 今もずっとそうだろう。 「あはは、よく言ってくれるじゃ〜ん…!…幸せになりなよ、」 ボクとは違って。 ……そう付け加えようとしたが、やめた。 これじゃほんとにただの嫉妬じゃないか。 キセルが喜んでるんだぞ。 喜んでやれよ、自分。 そんな気持ちを遠回しにしながら、ボクはキセルに聞いた。 「……で、どすんの?こっからは離れんの?ボク、一応違う居場所見っけたんだ。ここあんたらのうちにするなら、ボクはこっから離れるけど」 「……え、あ…」 キセルが頼もうとしてたこと、ボクが先に言ったんだろう。 キセルは無言で、少し俯きながら頷いた。 ボクはうんうんと無言で少し笑顔に頷き、一つため息を吐いて言った。 「………じゃあボク、明日ぐらいにもここを出てくよ」 ここから数年後、ボクは『street children killer』たるものに入るため、再びここに戻ってくるのだが…それはまた別の話。 - - - - - 「……それじゃあ」 ボクは少しにっこりと笑いながら、軽く手を振った。 「………う、うん…」 お見送りは、キセルとその奥さんであろう人との2人体勢だった。2人もいらんやろ、マジで鈍感やなキセル。 ……キセルは何か言いたげだったが、ボクは敢えて何も聞かなかった。 どうせ、「いつでも遊びに来て」とか、わけわかんないこと言い出すんだろうと。 聞きたくない。 聞いたら引き戻したくなりそうな気がするんだ。 なら、あの人からの最後の言葉ももういらない。 「………うん、じゃあね」 笑顔でその場を後にする。 ボクが辿った道に一粒、二粒と水滴が落ちていたこと_ もう誰も知るよしもないだろう。 ___このあと、ボクは知ることになる。 あれが、キセルからの「最期の言葉」になったこと。 - - - - - - プルルル、プルルル…… キセルとの別れからさらに数年後。 「……ん…?」 パーカーを布団にしながら雑に寝ていたところ、いつもより早く起こされた。 いつもは日差しに起こされたところ、今日は電話の着信音。 「……はぁい…?」 パーカーを羽織りつつ、目を擦りながら、ロングヘアの後ろ髪をとかして言う。 『……た、大変なんです…!き、キセルが…』 「キセル」。 その名前を聞いた途端、擦る暇もなく目は開き、櫛を持っていた手から櫛は外された。 「……キセルが、なんかあったんですか…?」 声を聞いたことはなかったが、恐らく声の高さ的にキセルの奥さんかなんかだろう。 多分それ以外にこの世界でキセルのことを知ってる人はいない。 『……そ、その…』 話を聞いたところ、朝起きたら、リビングでキセルの心臓が何かで刺されて死んでいたらしい。 __だが、ボクはその時テンパっていたのか…可笑しさに気づけなかった。 そもそもボクに連絡する手段をキセルの奥さんは持っていない。 それどころかボクとキセルの間で何があったかをキセルから聞かされない限り知らないはずだ。 てかこの話でボクに電話かけてくること自体なんらかの罠だったんだ。 ボクはその違和感に気付けず、話を聞くなり、飛ぶような速さでキセルの家に向かった。 - - - - 「…あ、あの…」 恐る恐るキセルの家を訪ねると、そこには奥さんの姿があった。 口元を手で押さえながら、無言で手招きされた方向にボクは向かった。 __リビング。 そこには確かに、キセルの死体があった。 致死量以上の血が流れている、こりゃもう手遅れだ。 それは素人が見てもわかるような内容までいくところだった。 …今でも鮮明に覚えている。 刺されていたのは心臓、恐らく武器は四つ目錐とかアイスピックとかその辺の針のモノ。 武器は死体から抜かれていて、そこから血がさらに滲んでいた。 どこを狙ったらそんな綺麗にいくのかわからなかったが、キセルの体を貫通させていた。 恐らく常習犯だったのだろう。 「………!!」 ボクが無言でキセルの遺体に近づくと、キセルの奥さんはその場で立ち尽くしていた。 ボクはその時、顔を覆って泣き出した。 ___今思えば、あれも犯人を炙り出すための作戦だ。 そして、見た目は「非力な少女」のボクが隙を見せた瞬間、犯人はそれを狙った。 ボクの後ろから、空気をも割く勢いで、何かが振り下げられる音がした。 ………腕だけ、刺された。 ボクはそれと同時に後ろを振り返り、鬼の形相でこちらを睨みつける、キセルの奥さんを見た。 キセルの奥さんの顔には、愛情もクソもなくて、ただ「キセル」ではなく、「キセル」が持ってる「何か」を目的にした顔だった。 …やっぱりキセルは鈍感だ、こんな愚図女に騙されるとは。 「……あ、あんたさえいなくなれば…この人の宝物は私のものになるの…!!」 キセルの奥さんは、それこそ非力な腕で、ボクの腕に刺さった武器…四つ目錐をボクの腕から抜こうとするが、それすらも見逃さない。 キセルの奥さん……後々知ったんだが、やはりこの人はある種の結婚詐欺らしきものの常習犯だった。 「……ボクの宝物はキセルなんでね、それを奪ったあんたなんかに……キセルのものは寄越せるわけない」 その時のボクはどんな目をしていたんだろうか。 相手は一瞬怯んだようで、ボクからすれば十分な隙を見せた。 それを狙って、ボクはポケットに仕込んだカッターナイフで…相手の心臓を滅多刺しにした。 ……相手が動かなくなった頃だろうか。 息は荒く、少し痙攣している手を、ボクは自分自身で見つめ直した。 …自分の手を、少し齧ってみた。 なぜそうしたかは今でもわからない。ただ… …なんか、特別だった。 その直後、キセルを見た。 ……今まで抱いた感情の正体はこれだったのだろうか。 愛情でもなんでもない、ただの食欲。 そうだったら悲しいな、としか言いようがない。 本当に悲しい。 いくら人を愛しても、鬼はそれを食欲としてじゃなきゃ充せない。 それを知ってしまった。 それに気づいた頃には、もうキセルの跡形は、頭、下半身、そして左手しか無くなっていた。 ボクの口の周りは血で染まっていた。 目線の先には涙が落ち、両手にはかつてキセル「だったもの」が残されていた。 キセルだったものを額に当て、朝方の街でいつまでも泣き続けた。 そして…ボクの体感では何時間か経ったように思えたとき、さすがにボクは踏ん切りがついた。 [メモクレへ]
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rattkii
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